遺留分って? ~その1

1.はじめに

遺言書を書こうとする際や遺産分割の手続きをしているときなどに関係してくる制度で「遺留分」というものがあります。
「遺留分」というワードは結構有名なので、「言葉は聞いたことがあるんだけど正確にはどんな内容だっけ?」ということが結構あるようです。
しかし、この部分はしっかりと理解しておかないと後になって思わぬ請求を受けることや、逆に本来なら受取れていたはずの財産をもらい損ねるというようなことも起こります。
知っておいて損はないのでここで「遺留分」について見ていくことにしましょう。

2.そもそも遺留分って?

遺留分とは、一定の法定相続人が持っている最低限法律によって保証された遺産の取り分のことを言います。
これは、遺言書といった被相続人の意思によっても奪うことができないものです。

本来は自分の財産をどのように処分するかは原則自由にできます。
ですので、通常ですと遺言書がある場合は、財産の分ける割合や誰に渡すのかといったことは原則その遺言書に書かれた通りに分配されます。
しかし、それを認めてしまうと、例えば「財産のすべてを寄付する。」といった遺言書があった場合に、本来財産を受取れるはずだった相続人の手元に何も残らないということにもなります。
そのようなことを防ぐ手段としてこの遺留分という制度があり、被相続人の死後に一定の相続人の生活を保証するという目的があります。
少し堅苦しい言い方になりますが、遺留分とは「被相続人の財産処分の自由」と「相続人の生活保障及び財産の公平な分配」という相対立する双方の利益を調整するために造られた制度と言えます。

ただ、一つ注意をしておかなければならないのは、遺留分という権利は何もしなくても自動的にその制度の恩恵を受けられるものではないということです。
遺留分の制度の恩恵を受けるためには、その権利のある人が、「私は遺留分をもらいたいです。」という意思表示をする必要があります。
逆に、自身の遺留分を侵害されるような遺言書があった場合に、本当なら遺留分の権利の主張ができるけれども、「私は遺留分はもらいません。」ということも当然できます。
その場合は、特に何もしなければそのようになります。
要するに遺留分の主張をしたい場合は、そのために必要なアクションを起こさなければならないということです。

さらには、この請求権はいつまでもあるわけではなく、自身の遺留分が侵害されているということを知った時から1年、もしくは相続開始の時から10年の間に請求しないと時効で消滅してしまいます。

3.遺留分が認められる人

先ほど遺留分は一定の相続人に認められた権利だと言いましたが、それでは一定の相続人とは誰なのでしょうか。

・法定相続人
遺留分のもらえる人の話をする前に「法定相続人」の話を少ししておきたいと思います。
「法定相続人」とは、民法で規定されている被相続人の財産を相続できる人のことを言います。
「法定相続人」には、以下のように相続順位というものが決められています。

第1順位 : 直系卑属(子どもやその代襲相続人)
第2順位 : 直系尊属(親や祖父母など)
第3順位 : 兄弟姉妹やその代襲相続人

配偶者は常に法定相続人となり、それ以外の法定相続人は上記の順番で相続人が決まっていきます。
先順位者が誰もいない場合に次の順位の者が法定相続人となります。
例えば、被相続人の子供がいる場合は、後順位者である被相続人の親や兄弟姉妹は法定相続人として財産を相続することはできません。

このように「法定相続人」の話の中には、被相続人の配偶者や子ども、親や兄弟姉妹が出てきます。
この法定相続人と次にお話しする遺留分が認められる人とはよく混同されることがあるのでその違いを見てみましょう。

・遺留分権利者(遺留分のもらえる人)
遺留分の請求をすることができるのは、以下のものとされています。

①配偶者
②直系卑属(子どもやその代襲相続人)
③直系尊属(親や祖父母など)

ここで先ほどの「法定相続人」と比べてみていただきたいのが兄弟姉妹です。
そうです、遺留分を請求する権利は兄弟姉妹にはないのです。
この部分がごちゃ混ぜになってしまっているということがたまにあります。
これを機にしっかりと覚えておいていただければと思います。

4.まとめ ~その1

いかがだったでしょうか。
わかっているつもりでも実際は間違えて覚えていたという方もいらっしゃったのではないでしょうか。
でもそれはいたって普通のことで、こういう法律の決まりごとはそもそもややこしいものなのです。

今回はここまでにして、続きは ”その2” のほうでご説明したいと思います。

こういった知識は、いざという時に知っているか、それとも知らないのかで大きく違った結果をもたらすということもあります。
いいか悪いかは別にして、「法律は弱者の味方ではなく、知っている者の味方である。」などと言われることもあります。
ただ、普通はそのような知識をすべて身に着けていて、何が起こっても大丈夫という人など一部の専門家を除いてほとんどいないのではないでしょうか。
日常の生活の中で判断に迷うというような状況はさまざまな場面でしばしば起こることだと思います。
そのようなときはできればその道の専門家に相談することをお勧めします。
我々行政書士は、そのような時の一番身近にいる相談者です。

相続手続きや遺言書作成のことならお気軽にご相談ください。
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